看護師の仕事につきたいけど、正看護師と准看護師の違いがよくわからないという方は多いと思います。
看護師の資格には正看護師と准看護師の2種類がありますが、一般的に看護師と記載されているものはこの正看護師のことを指していることがほとんどです。
ここでは、正看護師と准看護師の違いについて、仕事内容や資格取得方法、メリット・デメリットの違いなどについて解説していきます。
【体験談】私の場合はこうやって正看護師になりました
私が取得している資格は、正看護師です。
子供の頃から看護師になりたいと思い、高校を卒業してから看護専門学校に入学。
当時は看護系大学、短期大学が少なかったこともあり、初めから看護専門学校を受験しました。
私の年代では、同じ高校の同級生もほとんど看護専門学校を受験して、正看護師になっていました。
高校から准看護師を目指す人はいなかったですね。
今でも、高校卒業後に看護師を目指す場合は、正看護師を目指す人がほとんどです。
准看護師として働いている同僚はこんな方
中学卒業後にそのまま准看護師の資格を取る養成所に通い、准看護師として働き続けている人はあまり多くありません。
パターンとして多いのは、「准看護師として働きながら正看護師になる」「大人になってから最短で看護師を目指すために准看護師を目指し、そのまま准看護師として働き続ける」という2つです。
例えば、准看護師の資格を取ったのち、働きながら学校に通って正看護師になった私の友人。働きながら学校に通うのは、とても大変だったと聞いています。
例えば、看護師を目指す主婦やシングルマザー。知り合いの准看護師さんは、「子育てをしながら短期間で資格をとるには、准看護師の方が最短だから准看護師の資格をとった」と言われました。
「民間の病院で働く分には准看護師の資格でも特に問題がないから、特にこれから正看護師の資格は取るつもりはない」と言われて、なるほどと思いました。
今は准看護師の養成学校も減っていますが、社会人になってから看護師になろうと思う方や、子育てなどの事情を抱えた方は准看護師を目指すというのもいいと思います。
看護師の仕事
看護師の仕事は大きく分けて、以下のような内容になります。
診療の補助
医師が患者を診察する際の補助。医師の指示に基づいて行う行為です。
点滴、注射、酸素の投与などがこれにあたります。
また、医師がスムーズに処置や治療が出来るように、検査等に必要な物の準備や患者の状態の観察、患者についての報告をすること、など多くの補助があります。
療養上の世話
あらゆる年齢の健康障害がある人や、自分で自分のことができない人たちの日常生活のサポートを行うことです。
また健康を損ねたときには、できるだけ早く回復できるようにサポートしたり、健康増進のための援助などがあります。
看護師とは病気だけを観察するだけではなく、患者の生活全体を看る事になります。
正看護師と准看護師の資格の違いってなに?
同じ看護師という資格でも、正看護師と准看護師では、以下のような違いがあります。
正看護師免許は、厚生労働大臣が発行する国家資格です。
准看護師免許は、都道府県知事が発行する免許です。正看護師と同様に、全国どこでも働くことができます。
看護師の仕事内容については、准看護師も同様の医療行為が可能です。
違う点は、正看護師では、”医師、歯科医師の指示のもと業務を行う”、准看護師では”医師、歯科医師、または正看護師指示のもと業務を行う”ということです。
そのため、准看護師は正看護師に指示を出すことはできない、となっています。
看護学校と准看護師養成所のそれぞれのカリキュラムとは
では、なぜ同じ看護師でも資格の違いがあるのでしょうか。
これは、看護学校と准看護師養成所のカリキュラムの違いにあります。
2つのカリキュラムの違いについて説明していきますね。
看護学校
正看護師では、高校を卒業し、4年生看護大学(または4年生大学の看護学部看護学科)、看護短期大学(3年)、看護専門学校(3年)に通うことになります。
履修時間は、97単位(3000時間以上)必要です。
うち、実習時間23単位(1035時間以上)必要となります。
週に5日。全日での授業になります。
2年間は主に授業です。3年目は主に実習期間となります。
正看護師の教育の基本的な考え方は、以下のようになります。
- 人間を身体的・精神的・社会的に統合された存在として幅広く理解し、看護師としての人間関係を形成する能力を養う。
- 看護師としての責務を自覚し、倫理に基づいた看護を実践する基礎的能力を養う。
- 科学的根拠に基づき、看護を計画的に実践する基礎的能力を養う。
- 健康の保持・増進、疾病の予防および健康の回復にかかわる看護を、健康の状態やその変化に応じて実践する基礎的能力を養う。
- 保険・医療・福祉システムにおける自らの役割および多職種の役割を理解し、多職種と連携・協働する基礎的能力を養う。
- 専門職業人として最新知識・技術を自ら学び続ける基礎的能力を養う。
准看護師養成所
准看護師の場合は、中学校を卒業し、准看護師養成所に2年通うことになります。
社会人から准看護師養成所に通う場合も2年通うことになります。
准看護師学校は高校中退者も受験することができます。
履修時間は、2年で1890時間必要です。
うち、実習時間は、735時間以上必要となります。
週に3日程度。もしくは午前・午後どちらかの授業になります。
1年間は主に授業です。2年目は主に実習期間(全日)となります。
准看護師の教育の基本的な考え方は、以下のようになります。
- 医師、歯科医師、または看護師の指示のもとに、療養上の世話や診療の補助を対象者の安楽を配慮し安全に実施することができる能力を養う。
- 疾病をもった人々と家族の様々な考え方や人権を尊重し、倫理に基づいた看護が実践できる基礎的能力を養う。
准看護師は、正看護師と同様の医療行為を行えます。
しかし、正看護師との大きなカリキュラムの違いは、准看護師のカリキュラムでは、”看護過程”については、ほとんど学ばないということです。
看護過程とは、簡単に言うと、患者の全身状態をアセスメントし、患者の持つ問題点を抽出し、その問題点を解決するためのプロセスです。
看護計画を立案し、それに沿って日々の看護を実施するということですね。
この「看護過程」は看護師としての本来の業務と言えると思います。
看護過程を展開していくことで、患者に対しよりよいケアが行えるようにするため、そのプロセスを学びます。
そのため、履修時間も長くなっており、免許取得までの時間差が生じています。
正看護師は、自律的に判断し行動できる能力をつけることを目標としています。
これに対し准看護師は「医師または看護師の下で安全に実施できる能力を養う」という、指示を受けて働くことを前提とした教育を目的としています。
自律的な判断は教育目的に含まれていません。
准看護師の教育課程は経験していませんが、実際に准看護師から正看護師になった人から話を聞くことができました。
その人は正看護師になるまでは、「なんで同じ仕事するのに、給料がこんなに違うの?」と不満を持っていたそうです。
しかし、実際に、正看護師の資格をとるため専修学校へ学びに行ったあとは、「正看護師になるってすごい大変だね。習うことも全然違うし、看護過程とかも色々アセスメントする力が必要だから学ぶことが違うし、給料が違うのは当然だって思った。」と両方の教育課程の差を話してくれました。
やはり、資格取得までのカリキュラムは大きく違うようです。
仕事内容なにが違う?
この記事の始めに書いたように、正看護師、准看護師の資格の違いは以下のようになっています。
正看護師…医師(歯科医師)の指示に従って診療の補助と療養上の世話などを行う
准看護師…医師(歯科医師)・看護師の指示に従って業務を行う
しかし、実際の仕事内容については、あまり変わりません。医療行為も看護師同様に行います。
厳密に言うと看護師の補助業務を行うこととなっていますが、実際の医療現場では看護師不足が深刻な状況になっており、正看護師同様の仕事を行っているのが現状です。
以前に働いていた民間の病院では、正看護師も准看護師も同じ業務を行っていました。特に、制服などに違いもないので、「○○さんは准看護師だよ。」と聞くまで、気づかないくらいでした。
しかし、役職や、各委員会の役割、リーダーなどは担うことができないというルールはありました。
正看護師に指示することはできないという理由からです。
同様の理由で、夜勤のメンバー構成も准看護師のみは不可であり、必ず正看護師と組まれていました。それ以外は全く同じ業務内容で働いていましたよ。
正看護師、准看護師のメリット、デメリット
ここでは、正看護師と准看護師になることのメリット、デメリットを比較しながら説明していきます。
学費
正看護師
受験する学校により大きく差があります。以下は、あくまで目安です。必ずこの範囲ということではありません。別途、教材費などがかかります。
大学(私立・国立・公立)によって学費は異なりますが、看護学科は医学系の学科であるため、入学金・授業料などの学費はやや高めとなっています。
公立・国立で年間50~60万円程度。私立で年間120~190万円程度。どちらも別途入学金(20~50万円などが必要になります。)
短期大学(3年制)は、公立短期大学で年間60~80万円程度。私立短期大学で年間120~180万円程度。
専門学校(3年制)は、年間50~90万円程度。
准看護師
准看護師養成所は年間50万円程度。
准看護師は二年制なので、学費は最も安くなります。
給料
新人看護師の給料総額(夜勤などの手当含む)では、全国平均で、大学卒271381円 短期大学・専門学校卒263551円となっています。
日本看護協会の調査によると、准看護師と正看護師の給与差は月6,5~9万円。
年間で比較すると、78万円~108万円ほどの差があります。
このように、給料水準が正看護師に比較して低いことが、准看護師のデメリットです。
就職先
正看護師の勤務先で一番多いのは病院です。多い理由としては、大学病院や総合病院などが新卒の「正看護師」を積極的に採用しているからです。
正看護師は勤務先の選択肢が幅広くあります。
准看護師は、大きな病院でも採用枠はあるものの、『看護基準』を満たしません。看護基準は診療報酬と関係します。
診療報酬を得るためには、正看護師を採用するほうが、病院としての利益につながるためです。
しかし、中規模病院や、個人経営の診療所・クリニック、介護施設などは、正看護師と准看護師の区別もなく、人件費を抑えられる准看護師を雇用する傾向があるようです。
また、個人経営の病院などは、日勤のみの勤務体制のところが多いため、無理のない働き方ができるというメリットがあります。
ただし、勤務条件として、業務内容を制限されることがあります。
例えば、病院に就職したが、そこの訪問看護には従事できない、看護の役職につけないなどです。
事前に、就職希望の病院に勤務条件を確認しましょう。
キャリアアップ
正看護師は、認定看護師、専門看護師、特定看護師などのキャリアアップの道があります。
認定看護師
21の特定分野において、高い技術と知識を持っていると認められた看護師です。
患者様に対してより質の高い看護を行うほか、後輩看護師の指導、教育、相談といった役割も求められます。
5年以上の実務経験(そのうち3年以上が特定分野での経験)と、認定看護師教育機関での教育課程を修了したのち、認定看護師認定審査に合格することが必要です。
専門看護師
医療に関わる様々な場面で活躍する、まさに看護のプロフェッショナルです。
13の専門分野に特化し、医療現場での患者様の看護だけではなく患者様の家族に対しての心理的ケア、医療従事者に対しての教育やマネジメント、地域の医療環境の整備や研究活動など、幅広い範囲で活躍することができます。
5年以上の実務経験(そのうち3年以上が専門分野での経験)と看護系大学院で修士課程を修了したのち、専門看護師認定審査を受験することが必要です。
特定行為看護師(特定行為に係る看護師)
在宅医療の推進を図るためにできた制度です。
看護師が行うことができる医療行為や診療補助行為は厳密に決められています。
通常、医師の判断と指示の下でしか行えないような38の医療行為があるのですが、該当の医療行為について、医師が作成した手順書(指示)に基づいて看護師でも医師の判断を待たずに行うことができるようになるという制度です。
特定看護師になるためには特定行為研修を修了する必要があります。
また、正看護師は自己の努力次第では、昇格のチャンスがあります。
准看護師については、法律上看護師に命令することができないので、昇格はできません。
ただし、もしキャリアアップを目指すのであれば、看護専修学校か看護専門学校に進学し、正看護師免許を取得するという方法もあります。
正看護師、准看護師向いているのはこんな人
ここまでに正看護師、准看護師の違いについて説明してきました。
では、実際にどちらを選べばいいのでしょうか?
正看護師、准看護師に向いている人は以下のようになります。
- 大学病院などの大きな病院で勤め、スキルを身につけたい
- キャリアアップを目指したい
- 安定した収入を得たい
- 今後長く看護師として働きたい
- 経済的に厳しく、正看護師学校に行くことが困難な場合
- 働きながら、資格を取得したい
- 短期間で資格をとりたい(できるだけ早く現場経験を積みたい)
- 家族の看護や介護のために学びたい
- 近くのクリニックやパートで働きたい
厚生労働省は正看護師・准看護師を一本化すること提言しています。今後、何年先になるかは決まっていませんが、准看護師は廃止の方向に向かっています。
また、日本看護協会では、正看護師を推奨しています。都道府県によっては、准看護師養成を停止している県もあります。
実際、看護師全体の中でも、高校卒業から正看護師を目指す学生が増えており、准看護師は社会人の占める割合が増加しています。
そのため、平均年齢も40代前後と高めになっています。
廃止の方向に向かっているとはいえ、資格が消失するわけではありません。准看護師から正看護師へのキャリアアップの道もあります。
まとめ
ここまで、正看護師、准看護師の違いについて説明してきました。
以上の内容を参考にして、自分の今後のビジョンやライフスタイルに合わせてどちらが自分に向いているのかを考え、選択していただけたらと思います。
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